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たのしいおたくのせいかつ

青山オペレッタ THE STAGEが良かった話

舞台のアーカイブを見たんですけど、思ってた以上に面白くて魅力にあふれたジャンルだったので、ダイマはあまり得意ではないですが、マジで青山オペレッタをみんな見てくれというテンションで書きました。めっちゃ長くなった。

 

 

青山オペレッタ——

東京・青山にある、未婚の若い男性だけで構成された歌劇団

その歴史は古く、100年以上に及ぶ由緒ある歌劇団で、その成り立ちから女性役も男性が演じるのが特色。

記念すべき「100期生」を迎えるにあたり、実験的な新チーム「ノーヴァ」が結成されるが、

特別オーディションで選ばれた「100期生」は、個性の強すぎるメンバーばかりだった。

果たして彼らは、半年後の初舞台を成功させることが出来るのか——。

(公式イントロダクション)

読んで分かる通り所謂逆宝塚の劇団を舞台にした作品で、CDとビジュアルボイスドラマを原作とした舞台。キャラクターの声を演じるのは2.5系でもよく拝見する舞台俳優さんばかり、かつ全員そのまま舞台でも同じキャラを演じてるのもあって、元々舞台化ありきで組まれたキャスティングなのかな~と思います。

 

パッと受ける印象が逆宝塚て…って感じなのと、サイトとかで観る舞台のメイクもキャスティング的にもうーんもう一声!という感じだったので、正直コンテンツとして敬遠してたところがあって、配信も見てないものに文句言うのは良くないなみたいな気持ちで見たんですけど、いやホント……めっちゃごめん………ってなった。普通にめちゃくちゃ楽しんでしまった。

ストーリーとしては100期生による新チーム「ノーヴァ」が結成、キャストオーディションを経て初舞台をやる、という感じで、最初は個性豊かすぎてソリが合わなかったメンバーが段々と理解し合って舞台が成功して…というまぁ良く言えば安心して観られる、悪く言えば特に捻りはない展開なのですが、それでもすごく面白かったんですよね。

 

クッソ長くなったんで小見出しつけました

  

舞台の感想

ストーリーパート、劇中劇、レビューという流れで3時間弱かな?

3時間そこそこまぁ長いし、あっという間だったという感じではないんですけど、普通に面白かったのでそこまで苦じゃなかったです。

青オペというジャンルを知ったのとほぼ同時に舞台化も知って、キャラクターの設定以外には特に何も知らないまま観たんですけど、これがまぁ本当に初見が一番楽しいんじゃないかなってくらい丁寧で良かったです。特にキャラクターの描き方と、青オペの題材であるお芝居そのものに対する描き方がすごく良いなと思ったのでこれは後述します。

 

まぁ舞台自体の感想って言うと杉江大志さんが演じるメイちゃんがマジで全部持って行ったんですけど……配信3500円ですが3000円分くらいメイちゃんに持っていかれた。出てくるたびに個性爆発してて面白いから本当にずるいし、そのくせ最後はめちゃくちゃ良いこと言って泣かせてくるから本当に魅力があって良いキャラだった。天丼で同じ事3回やってるのに3回とも面白いのはマジでズルいんよ。他の人のおもしろパートが霞むんよ。

 

レビューはレビュー専用の衣装で主題歌を歌うんですけど、後ろの階段の感じとかあ~宝塚意識してるんだなここは…って思った。私は宝塚は観たことがないので一般的なイメージしかないですが、それでもピンとくる感じ。階段の感じだけだけど。

ベネラ(女役)の子のレビュー衣装がマジで可愛いんですよね~。長江くんも大平くんも全然女装感がなくて本当に可愛い女の子に見える。衣装にもヘアメイクにもきちんとお金がかけられてて、魅力的に見せようって作り手の気持ちが伝わってくるんですよね。それを身にまとって演じてる2人もベネラとしての魅力を魅せようってしてるのもすごく分かるし。

主演の長江くん、十二夜ではヴァイオラとセバスチャンの二役やってたしお芝居も歌も上手くてすごい良かった。元々推しと共演してるのでめっちゃしっかりしてて多才なことは知ってたんですけど、いやマジでめっちゃ良かった。

 

キャラクター性の魅力

男性だけの劇団、新チーム、個性豊かなメンバーの初舞台、っていうとやっぱりA3が被ってくる感はあるんですが、A3がほとんどが今まで演劇に縁がない人生を歩んできた人たちが少しずつ経験を積んで演劇の魅力に気づいていき成長するのに対して、青オペは100期生は劇団的には新人とはいえみんながそれぞれ様々な経歴を持ち、演劇や芝居そのものや魅力についてある程度理解のある人たちばかりなのが一番異なる点かなと思います。主人公のあさひだけは全くの素人ですが、他のメンバーはバレエやテレビ等で、人によっては華々しい経歴があり、それでも自分自身の芝居や生き方に行き詰まりを感じた人たちが、自分をもうひとつ上の高みに上げることを目標に青山オペレッタに入団しているし、それをきちんと描いているのがすごく良いなと。なんとなくで入団した人がいないし、みんなお芝居に対してめっちゃ真面目っていう大前提がある。

そして、その経歴や生い立ちによって、それぞれが芝居において得意なこと苦手なこと、できることできないことがきちんと描かれているのもすごく良かった。例えば主人公のあさひは演技に対しては素人ですが、生い立ちもあって他人の間や空気を読むことにとても長けていて、更に子供の頃母親の真似をして歌を歌っていたので女性のキーで歌を歌うことが出来る。その美しい歌声と、相手の感情の機微を読める間の取り方を土台にノーヴァの初公演で主演を勝ち取れる、という根拠と見せ方と説明がきちんとされているので、主人公独特のチート感も薄く、皆よりも芝居経験が劣っていても芝居に対するアンテナを張る才能を感じさせてくれるのもすごくいいなと思いました。

それぞれのマイナス面に対する描き方も、例えばテレビで子役として活躍してきた輝夜はいつまでも子役のイメージが付きまとうのを払しょくする為に青山オペレッタに入団したわけですが、そのテレビで培った経験が裏目に出てしまうシーンがあったり、大衆演劇で育ってきた桐久は特殊な環境かつ生い立ち故にプライドの高さや他人とのコミュニケーションに少し難があったり……という感じで、取ってつけた感じじゃなく、本当にそれぞれにきちんと「そうなった」背景が見えて、その説明の仕方も助長じゃなくストーリーの中で無駄なセリフもなくこちらに理解させるのが本当に上手い。

 

正直、個性豊かとは書かれているものの、そこまで奇人変人に振り切ったキャラクター性ではないので、二次元としては普通というかインパクトが弱いかなぁという印象だったんですけど、それって青山オペレッタという劇団を舞台にしたストーリーの中では不要なステータスを全部そぎ落としてるからなんですよね。

なんかあるじゃないですが、変なものが好きとか、喋り方が普通じゃないとか裏の顔があるとか……魅力付けとしてそういう設定が悪いと言いたいわけではなく、この青山オペレッタというジャンルでは不要、という削ぎ落としの判断と、残ったものをしっかり描くことに注力している丁寧さが私はすごく好感が持てるなと思いました。

  

芝居、演劇の描き方

芝居そのものに対する描き方も抽象的ではなく具体的ですごく作り手のお芝居に対する真摯さも感じられたんですよね。ふわっとしてない。

オーディションでなぜ選ばれたのかなぜダメだったのか講評するシーンがあるんですが、本当に具体的で舞台をある程度観たことある側ならなるほど……となるめちゃくちゃ難しいわけではないけどわかりやすく技術的な話までするんですよね。

逆に、具体的にノーヴァのみんながどういうレッスンを積んでどういう稽古をして~というシーンは一切ない。オーディションが終わったらすぐに半年後!本番!くらいの時間の飛び方なんですけど、これも「ほぼ全員がある程度芝居の下地がある」「全員芝居がしたくて入団した」という設定なので、恐らく人間関係さえ形になれば、稽古中って大きな事件が起こりようがないんですよね。みんな真面目だから。

まぁ書こうと思えば書けるんだろうけど、多分青山オペレッタが描きたいところってそこじゃなかったんだろうなっていう。そしてその取捨選択がスパっとしていて逆に気持ちがいいし、なくても前述のとおりの理解ができるようになってるんですよそれまでの描き方で。早いな!とはなったけど、いやアレはどうなったの?これは?みたいなのがほぼないからストレスもほぼなし。

 

(追記)これボイスドラマだとまるっと2部のお話なんですね。(最近やっとおいついた)知った顔で書いたの普通に恥ずかしくて笑った。
ボイスドラマだとちょうど1部が終わるところなので、その後を舞台でまるっとカットしたのは納得だし、先に書いたとおりあっという間に十二夜本番にたどり着いてても舞台初見の人間に違和感を抱かせないキャラとお芝居の下地の描き方がうまいという感想には変わりないんですが、2部普通にめちゃくちゃ面白いので舞台でもやってほしいんですが?秋公演に入れ込む可能性はあるけど、劇中劇をお試し公演みたいな形にして2部をやってからの十二夜本番、でも引っ張れた気はするんですが、それをスパッとカットして十二夜本番まで一気にやった潔さはやっぱりすごいと思います。(追記ここまで)

 

そして、ノーヴァの旗揚げ公演の演目がシェイクスピアの「十二夜」。

これは個人的な話なんですが、昔観た「十二夜」に割とトラウマがあって十二夜って聴くとウワッってなっちゃうんですけど、私の嫌な思い出を全部払拭してくれる良い十二夜だったなぁと。個人的には喜劇とコメディは違うと認識しているので、喜劇の側面も大事にして、笑いのシーンではコミカルさもあって、普通に面白かったです。これだけ有名な古典作品に対して変に奇を衒ってやろうみたいな感じが全く無いの、本当に歌劇団としてのあるべき形を真面目に描こうとしてるんだろうなと思いました。

劇中劇とはいえ舞台セットや衣装もきちんと作られているし、尺としては1時間ちょっとくらいかな?なんですけどダイジェスト感もなく、きちんと演目として没頭できるんですよね。

またA3を引き合いに出しちゃうけど、A3の劇中劇は「キャラクターたちがここまで歩んでこれた集大成」としての見せ方が強くて、劇中劇に更にその役を演じるキャラクターの感情を乗せてくるのが醍醐味であり魅力じゃないですか。でも青山オペレッタはガチの舞台なので、そこに演じてるキャラクターの感情は一切出てこない。私たちは青山オペレッタという劇団の、ノーヴァの初舞台を観る客であり、そこに立ってるのはあくまでヴァイオラであり、オーシーノであり、オリヴィアであり、観ている側に演じている役者の歩みや感情を見せることがないんですよね。どっちが良い悪いという話ではなく、青オペのコンセプトというか、キャラクターの成長と青山オペレッタという劇団としての芝居を二本柱としているはずなのにそこの癒着のなさというか、そこに魅力を感じて思い入れを感じさせることも出来たのに、そうさせない潔さみたいなのは私はすごくこれはこれとして好感が持てました。

 

多分、思いっきり感情移入してキャラクターと苦楽を共にする楽しみ方をしたい人からすると、思った以上にさっぱりスッキリした作りなのでもしかしたら物足りないのかもしれない。でも私はその取捨選択の潔さに青オペの良さや魅力を感じたし、その削ぎ落しがある中でも描くべき箇所を逃さない丁寧さ、上手さがあるなと思いました。

  

青山オペレッタというコンテンツの話

先に書いた通り、青オペの原作はビジュアルボイスドラマです。YouTubeで見れるんですけどこれ全部なのかな。私も初心者なので良く知らないのですが、20話くらいあがっててちょっとずつ見始めました。

序盤は舞台とストーリーが同じでセリフもほぼ同じなんですが、なんか違和感があるなと思ったら、ビジュアルボイスドラマのほうがセリフの間が若干長い気がするんですよね。掛け合いの間っていうよりはセリフの息継ぎの間っていうのかな。舞台がハッ、くらいならビジュアルボイスドラマはハァ、くらいの。めっちゃゆっくりだって思うほどじゃないんだけど。

この違和感に気づいた時にエッって思った話がありまして、青オペ舞台の劇中、さっきも書いたオーディションの講評のシーンで、それはテレビでのお芝居と舞台のお芝居の差の話ではあったんですが「舞台は間が短い方がお客さんも楽しめるんだ」っていうセリフがあるんですよね。エッじゃないですかこれ……。

キャストの人たちが舞台経験のある人たちなので、もしかしたらその舞台と声優の経験の差で自然とそうなった間なのかもしれないし、もしかしたらその間の取り方も私の気のせいかもしれないんですけど………これマジだったら青オペってマジヤバいジャンルなんじゃないかみたいな気持ちになってる。

   

マジで正直、見る前はキャラありき設定ありきでなんとなくやるみたいな……ふわっとオブラートに包むと伝わらないかもしれないけど、正直そういう感じのジャンルかな~みたいな穿った目で見てたんですよ。マジで本当に謝りたい。

物語やキャラクター造形に変な雑さや矛盾がなくストレスを感じないな~というのがすごく魅力的に私には見えてます。

しかし、それだけにイマイチコンテンツとして地味なのが本当に惜しいな……最近だとこういう系ならアニメとかゲームになってから舞台化が割と一般的なパターンの中、正直ビジュアルボイスドラマだけだとめちゃくちゃジャンルとしてインパクトが弱いというか。CDくらいしか収入源しかないのに逆に舞台の予算どこから金が出てるんだという心配もある。

 

それに、土台がしっかりしていてキャラがみんな真面目なので、そんなぶっ飛んだ感じがない、ビジュアルの華やかさのわりに質実剛健すら感じる丁寧さが私は魅力を感じたとはいえ、それを「地味」とか「意外性がない」と評価されてしまっても分からんでもないな~というところは確かにあります。

世の中には様々なコンテンツがあって、どれもユーザーを獲得するためにジャンル特有の魅力や個性をたくさん考えて発信されている中で、マジでそこでガチンコでそういうコンテンツと戦えるかっていうと正直なところ………なんですけど、私はとても丁寧で良いコンテンツだなと思ったので、秋公演も行きたいし、CDくらいしか財源ない気がするけど(2回目)どこで稼いでんのかよくわからない青オペがちょっとでも続くなら応援したいな、と思いました。

 

 

 

5000字超えたの本当にウケる。舞台青山オペレッタアーカイブは5/3まで、1公演3500円なので良かったら見てください!

 

stage-aoyamaoperetta.com