世界で一番推しが好き!

たのしいおたくのせいかつ

中島鉄砲火薬店

あんなに京王新線にてこずっていた私だがもう地図を見なくてもあの乗り場だな!って行けるようになったぜ!!!(新宿~初台間に限る)(一駅)

 

 

 

新国立劇場、劇場回りが静かで好きなんですよね。劇場もキレイで佇まいも上品だし。何もなさそうに見えてマチソワ間に時間つぶすところも困らないし。去年の夏に中劇場で見て、小劇場は今回が初めてでしたが、全然小ちゃうわ!噂に聞いてた通り音もすごくいいし、前方のフラットは座ってないから分からないけど、傾斜がちゃんとあってすごく見やすかった。椅子も折り畳み式だけど座布団も敷いてあったし、なんかめっちゃ空調暑かった以外は快適でした。また観に行きたい。

 

 

新撰組伍長の中島登が主人公のお話で、彼が浜松に居を構え、離れて暮らしていた息子を呼び寄せて新しい生活を始めようとしたところに、彼に恨みを持ち、仇討ちを計画している青年が現れ…というストーリー。中島登は実在の人物で、明治維新後も存命かつどんな暮らしをしていたか割と資料が残っている人なので、その史実に基づきながら、ある青年の復讐劇というフィクションを交えたコメディ時代劇という感じ。コメディでした。

新撰組!仇討ち!ってなると何かシリアスな話なのかなと思って蓋を開けたら、大体コメディだったな。まぁ飄々と何にも執着せずどこか欠けたように見える中島登の過去も、それを背負い耐えながら生きている登自身ももちろんシリアスで真面目ではあるのだけど。なんかシリアスなんだけどうっす~~~~~~~~~~~くコメディっぽい空気が流れてるのはめっちゃ伊藤さんの演出だなぁという感じ。

伊藤さんの演出って、なんか会場に入った瞬間のセットの空気感からめっちゃ伊藤さん!!!って匂いがするんですよね。終わった時も。多分それが伊藤さんの色なんだろうけど、今回も劇場に入ってセット見た瞬間うわ~伊藤さんだって感じがした。終わったあと「中島鉄砲火薬店」の看板にスポットライトが当たってそれだけが置き去りになってる感じもめっちゃ伊藤さんだなと。

そういえば「中島鉄砲火薬店」ってタイトルだから中島鉄砲火薬店の話かと思ったら中島鉄砲火薬店が出来るまでのお話でした。中島鉄砲火薬店ちゃうやん。それは別にいいけど。

 

登は優しい人なんですよね。自分の苦しみ、辛さ、そういうのを誰かと分かち合うんじゃなくて、全部ひとりで抱えればいい、つらいのは自分だけでいいって思っちゃうタイプの人。甘利の父親を殺した時も、新撰組に入った時も、五稜郭の最後の戦いの時も、彼は自分の命なんかに執着はなくて、むしろ死ぬためにそうしたはずなのにいつの間にか明治の世まで生き残ってしまった。その哀愁とか、どこか欠けた物寂しさみたいなのがさ~唐橋さんのあの飄々としたとらえどころのない感じとすごくマッチしてるんですよね。唐橋さんちょいちょいいろんなところで見ていて、前に推しと共演したスタンレーの魔女っていう舞台の唐橋さんもすごく印象的だったんだけど、それもまた登とちょっと通じる、飄々としてとらえどころがないけど、どこか諦めに近いような物寂しさをひとり背負っているようなところが少し似ているなぁと思ったし、やっぱりこういうお芝居がすごく印象的な人なんだなと思いました。あとあぁいう朴念仁ぽいけど実はめっちゃ強い、みたいなのもすごく似合う。カッコいい。

登は土方歳三に同行して五稜郭まで戦った人なので、登の夢や過去の回想に度々土方歳三が出てくるんですが、まぁ伊藤さん土方歳三めっちゃ好きなんだろうな……となった。オタクの夢全部詰め込んだみたいなカッコいい土方歳三なので、まぁそれは好みの問題としても、土方歳三アゲのために近藤勇の命って史実が残っている話を「実はそれは俺が近藤さんに進言したんだ」って土方歳三の手柄にしちゃうのはマジでどうかと思うよ!!!!!近藤さんのことなんだと思ってんだ。どんだけ土方歳三好きなんだよ。

 

推しはその登に恨みを抱いて仇討ちを計画する甘利と行動を共にする内山という役でした。西の出身で、ノリが軽くてすぐふざけるとっぽいお兄ちゃん、という感じ。真面目で根暗でちょっと陰険な甘利を茶化したり口うるさく言ったり、時に調子に乗りすぎて無視されたり、なんかめっちゃ推しだな~!!!って感じの役ですごく良かったです。こういう明るくて世話焼きで情に深い役、本人と性質が近いところがあるのかやっぱりハマるんですよね。いや推しはなんでもできるんですけど……(すぐ褒める)。こういう感じの役久しぶりに見られてうれしかったな。いやなんでもうれしいんですけど……。

甘利とは「新撰組に仇討ちをする」という目的が一致しているだけで、多分甘利が利害一致するそこそこ腕の立つやつ、くらいの感じで声をかけたのかな。生まれも育ちも経緯も異なる2人だから考え方も合わないし、内山は甘利をお前暗いのう!!ってすぐ茶化すし、甘利は調子の軽い内山に時にイライラしたりして、まぁ仲は良くないんだけど、最終的に計画が反故になってしまって甘利が内山の手を離さないといけなくなったときに、内山のほうから歩み寄ってくれるのがもう~~それは好きじゃん……そういう情に厚い男がオタクはみんな好きなんだ。なんだかんだ甘利は頭もキレるし、貴賤で人を差別しないし、真面目だし、でもちょっと危ういところもあって、仇討ちという点を除けばイイヤツなんですよね。内山もなんだかんだそういう甘利のことをほっとけなくて、計画がどうとかよりもずっと情が湧いてしまったの、そういうのすごくいいです。

物語の軸が甘利なので、内山が新撰組に恨みを抱いているという点についてはもうちょっとバックボーンの描写がほしかったな、と感じるところは正直あったんですけど、利害一致のみで行動していた2人に友情が目覚める展開はすごくいいので評価します(誰なん)。

今回結構ギャグパートを任せられることが多くて、推しが日替わりをやる下手側の席に座った時にこれは……オタクとして笑わなければならない…(笑うとは言ってない)みたいな使命感に駆られたけど普通に笑ったわ。あぁいうテンポと掛け合いが大事なギャグは本当に上手い。

 

あと、甘利が小間使いに使ってた、鶴太郎と亀吉っていう卑賤の兄弟がいるんですが、大見くん演じる亀吉がまぁ~~~!!!!可愛いんだ本当に。兄弟ってものが好きすぎる病気なので許してほしい。

兄ちゃん兄ちゃん、ってずっとお兄ちゃんの後ろについて、でも実はお兄ちゃんよりも冷静で多分頭もいいんじゃないかな。闇討ちに失敗して自分かお兄ちゃんが殺されるかもしれないって時に兄ちゃん!兄ちゃん!って泣き叫ぶ声が必死すぎてこっちが泣きそうになった。甘えんぼで頼れる人もお兄ちゃんしかいない感じがもうな~~そういうの私は大好きです。そうですか。途中で道を分かつことになったときにどうして……って辛くなったのにラストではどうも頻繁に会ってるっぽかったのでなんだよ仲良しじゃねえかよって安心しました。本当にちっちゃくて顔が可愛くて、幼げな口調がすごく可愛かった。ここだけ感想興奮しすぎじゃない????

 

ラストは、結局甘利の実力が登に勝てるほどではなく、登もいつでもかかってきなさい、というところで大団円だと思ったら、毎月20日が仇討ちの日で甘利や内山が登の家に普通にこんにちはってやってくるオチでそれはめっちゃ笑った。来月は甘利が経営する道場で練習試合があるからみんなの予定をすり合わせて21日の午前中にやるらしいですよ。フレキシブルに仇討ちのスケジューリングをすな。まぁでも全体的なコメディノリもあるから、そのオチは可笑しくて可愛くて、甘利も救われるラストですごくこの作品らしいんじゃないかなとは思いました。結構好き。

なんか正直演者のみなさんハードル上げすぎじゃない??というのが正直な感想。普通の心構えで観に行ったら普通に面白い舞台だと思うんですけど、推しの意気込みとか他のキャストさんが「この素晴らしい脚本を演じることが出来て役者冥利に尽きます!」くらいの感じで言うからこっちもめっちゃ身構えて行ったのに……みたいなモヤが残るのが正直なところです。普通に面白かったし私は結構好きな感じではあったんだけど、観客はやっぱりそういう前評判で期待値を上げたり心構えを作りがちなので、かといって何もないのも困るんだけど、そこの擦り合わせって難しいよな~~と感じた作品でもありました。

 

今回は日本劇団協議会の「日本の演劇人を育てるプロジェクト」としての舞台だったそうですが、正直育成対象者とは…?って感じだったな。まぁそれはいろいろ事情があるんだろう多分。知らんけど。多分オーディション受けた組が育成対象なのかな?まぁキャストが発表されたときに結構みんな育成対象者とは?ってなってたし、推しのこと育ってるやろが!って言われてたのがうれしかったので私はそれに関しては全然オッケーです。

日本劇団協議会のサイトを見たら「舞台芸術分野の優れた新進演劇人で発表の機会に恵まれない者に、発表の機会を提供することにより 新進芸術家の育成を図る事業」って事らしいんだけど、正直ピンとこないよなぁ。なんか、せっかくこういう日本の演劇をいろんな方面から育てるための素晴らしい事業をしているのに、それに関しての主催側がやりたかったこととか、想いやこの公演の意義とかが分からないまま観客はハテナを抱えながらただお金払って見に行くだけ、みたいなのそれでいいのかなぁとぼんやり思います。演劇する側がもっと良くしたいと思ってるのと同じくらい、観てる側だってその想いを受け止めたいし、知りたいって思ってるんだけどな。